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場



とても、気持ちの良い場所です。
比叡山麓から流れいずる高野川の水を、
細い水路に廻らせた集落の、路地に在る古い京町家。
耳を澄ませば、鈴のようにさらさらと、
波音のおとないが聴こえてきます。
春はあけぼの。まだ肌寒い早朝に霞む、紫だちたる雲の棚引き。
夏は夜。蛍の玉響のひかり。
秋は夕暮れ、見事な八瀬の紅葉に照り映える日入り。
冬はつとめて。衣笠の比叡を仰ぎ見て。
ここには、まだ静かに四季を感じ、
余情に浸ることのできる空間が残っています。
きものは、古来薬草で染められた「着る薬」でした。
糸を紬ぎ、椿で紫を染める。米で茜を染める。灰で藍を建てる。
染織は、土地の水と植生が育んだ、慎ましやかな営みの先にあります。
連綿と受け継がれた布は時を越え、叡智を湛えて、
大切な人を包み、未来を生きる子供たちへ
物語を紡いでいきます。
この場を、京きもの蓮佳の物創りの他、
植物染古法に倣い、きものとは何かを研究する旅路の出発点として、
遥かなるきものの道と、それを伝えてくれた上代の人々の手技に
静かに対峙できる空間として、
きものの視点で編んだ日本の文化工藝を発信する場に
育てていきたいと思っています。
お出ましを願うには便の悪いところですが、
風を感じ、せせらぎに耳を傾け、リトリートするように
ゆっくりした時間を過ごして頂けますと幸いです。
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